敏感期ってなに?
敏感期とは
子どもが、何かに強く興味を持ち、集中して同じことを繰り返す、ある限定された時期のことです。
この不思議な時期のことを発見したのは、オランダの生物学者ド・フリース(1848~1935)でした。すべての生物は幼児期に、自分の将来に必要なことのために、あることへの感受性が非常に敏感になり、それを環境の中に見つけ出し、強烈にかかわっていく特別の短い時期がある。このことを獲得すると、その感受性は鈍感になり、また次のものへの感受性が高まるというのです。
卵から出てきた青虫は、自分の周囲にある大きい木の葉は硬くて食べることができません。生まれたての青虫が食べることのできる葉は、枝の一番先にあるやわらかい新芽だけなのです。ではその時期の青虫がどうやって枝の先端にある自分が食べることのできる新芽を見つけるのでしょうか。それは、ちょうどそのタイミングに、青虫は光に対して非常に敏感になるからなのです。
この生物学上の発見を、教育に初めて利用したのがマリア・モンテッソーリです。今では心理学でもこの用語を使いますし、脳科学では「感受性期」、医学では「臨界期」など、共通の事実を専門科学によって異なる言葉で、異なるサイドから説明して、その重要性が語られています。
敏感期のことを知って教育するのと知らないで見過ごすのとでは大きな差が出てきますので、子どもをよく知り、ていねいにかかわっていくためには是非とも知っておきたい重要なことです。
敏感期を知らないと、すべて単なる「いたずら」に
- 机の上の物を落とす
- 手に持ったものをすべて投げる
- コンセントを引っ張る
- トイレットペーパーをすべて引き出す
- エレベーターのボタンをすべて押す
- テレビのリモコンをすべて押す
- 水道の蛇口をひねる
- ビンの蓋をあける
- 口紅をひねって出す
- オーディオのボリュームをひねる
- 小さなところに詰め込む
- ソファーの上で飛び跳ねる
- 塀の上を歩きたがる
あるあるですよね・・・こういった行動のすべてが、敏感期で説明できるのです。これ全部、何時間も、何日もかかっても、満足してしなくなるまで充分、させてあげたほうが良いです!
大人を困らせようとしているのではなく、身体全体・腕・手指を発達させたい、魂の叫びなのです!
なぜか急に泣き出した、怒り出した、あることに妙にこだわる、何かをじっと見つめて動かなくなる、というとき、敏感期のことを知っていれば、苛立ったり、高飛車に叱ったり、そのこだわりから引き離そうとやっきになったりすることはなくなります。
そして、子どものこだわりに関心を持ち、生命の不思議に感動したり、思わず笑いだしたりして、子どもと共に生きる生活が楽しくてたまらなくなります!
例えば、ティッシュひと箱なんて教材だと思えば安いもんです。袋に入れておけば、また使えます。どうしても困る場合は、何をしたいのかその行動を分析して、手作り教具の宝庫百均を活用して代用品を作ってあげると、はまればいつまでも遊んでくれたりします。
そして子育て期の水道代は、教育費と心得ましょう(笑)
言語の敏感期
- 話し言葉の敏感期(7ヶ月の胎児期~3歳前後)
7ヶ月の胎児は、耳が完成し、周囲の音や声を聴いているといいます。それらの聞いた声や音は、こどもの中に吸収され、ため込まれて、やがて誕生後に発せられる言葉の基礎となります。 - 文字に対する敏感期(3歳半~5歳半)
文字に対してごく自然的に興味や関心がでてくるのは、幼児期です。この時期にこそ、文字に対する興味や関心に応答できる環境を用意することが重要となります。
秩序の敏感期
- 秩序の敏感期(6ヶ月~3歳前後)
物を置いてある場所や物事の順番に対してのこだわりとして、秩序や秩序感と呼ばれるものが出てきます。大人にとってはどうでもいいようなことに子どもはこだわることがあります。
モンテッソーリ教育では、こだわりともいえる秩序の敏感期の現象そのものを善だとはいっていませんが、これらのこだわりは必ず善に向かうものとして現れてくる といういい方をしています。
感覚の敏感期
- 感覚的印象の探求、溜め込み(0歳~3歳)
- 感覚的印象の整理、分類、秩序化(3歳~6歳)
感覚とは、一般に「五感」とよばれる視覚・聴覚・臭覚・触覚・味覚をいい、これらの感覚を刺激する器官として、目・耳・鼻・皮膚・舌があります。
0~3歳までの幼児前期は感覚的印象をすべて溜め込む時期で、3~6歳の幼児後期はそれまでに溜め込まれた感覚的印象を、頭の引き出しの中に整理・整頓・言語化する敏感期になります。
運動の敏感期
- 運動機能の発達(0歳~3歳)
- 洗練、調整された運動(3歳~6歳)
運動とは、歩く・運ぶ・注ぐ・巻く・貼る・折る・縫う、などの動作や動きをいいます。
0~3歳までは、歩く・座る・持つ・運ぶ のような大きな動きの獲得を対象とした敏感期で、3~6歳までは動きをより洗練したものへと、調整していくための敏感期となります。
小さなものへの敏感期
- 小さなものへの敏感期(1歳~3歳)
床に落ちている髪の毛を拾ったり、お散歩中に小石やアリに夢中になったり、小さなものに興味を示します。
幼児が小さなものを持っていると口に入れないか冷や冷やしますが、子どもは小さなものの細部を観察し、世界を広げています。「早く行こう!」という一言を飲み込み、できるだけその瞬間を堪能させてあげましょう。
礼儀作法の敏感期
- 礼儀作法の敏感期(2歳~6歳)
人間関係を上手に構築し、社会生活を円満に過ごしていくための礼儀やマナー、作法を吸収する時期。
例えば、あいさつをすることや、「ありがとう」「ごめんなさい」の感情の伝達など、家庭内だけでなく、お友達や、社会の中で表現できるようにしたいものです。
読む敏感期
- 読む敏感期(4歳~5歳半)
読むのが楽しくてしょうがない時期です。
字を壁に貼ったり、絵本を置いたりしておくと、自ら読み始めます。
読むためには、幅広い語彙力も必要ですが、書き手の書いた未知の世界について想像をし、登場人物の気持ちを解釈する力も必要になるため、書くこと以上に高度な能力が身についていきます。
数の敏感期
- 数の敏感期(4歳~6歳)
文字同様、数に対しても幼児期に敏感期が現れます。
自分の年齢にこだわりを見せたり、お風呂の中で数を数え続けたり、数字を読んだり、日常の生活で自然に表れてきます。
この機を逃すことなく、数えられるものや、数字カードなどを子どもの環境に用意しておくと、「数」というものへの感覚が大きく成長します。
文化の敏感期
- 文化の敏感期(6歳~9歳)
モンテッソーリ教育でいう「文化」とは、植物・動物・鉱物・宇宙・歴史・地理など、広範囲にわたったもので、言語・数以上に出てくる興味や関心を文化の敏感期として位置付けています。
このような事柄にも子どもは、興味を示します。分厚い図鑑などをためらいもなく読み始めるのもこの頃です。
モンテッソーリの著書では6~9歳として書かれていますが、現代の子どもたちは、生まれながらにしてメディアを通した刺激が強いので、幼児期から出現する敏感期と捉えてもよいでしょう。
参考文献
たかはしまゆこ モンテッソーリクッキング養成講座
相良敦子『ママ、ひとりでするのを手伝ってね!』講談社 1985
相良敦子『お母さんの「敏感期」』ネスコ 1994